交通事故による損害賠償を受け取る方法は2つあります。今回の記事では、その方法の違いや、メリット・デメリットについて解説いたします。
損害賠償を受け取る方法について
交通事故で被害に遭った場合などの損害賠償は、一般的には、被害で追ったけが等が、これ以上治療を継続しても治療効果を期待できない状態になった(この状態を「症状固定」といいます。)時点で、将来の損害も推定して現金による一括払いで受け取る「一時金賠償方式」が採られています。
症状が固定した時点において、実際に要した治療費や交通費などは賠償額が確定できますが、将来の損害については、厳密にはそのときになってみないとわかりません。たとえば、後遺障害が残って将来の労働能力が失われたことに対する補償(逸失利益)や、将来の介護が必要となった場合の介護費用などは、そのときの身体状態がどのようなものであるか、生存の有無によって、金額が変わりうるものであり、症状固定の段階では確定が困難といえます。
将来の介護費用は高額にのぼる一方で、被害者の平均余命をどのように認定するかが交通事故賠償で争いとなるポイントであり、被害者と加害者の損害分担の公平さを実現できる「定期金賠償」という方式が実務では検討されてきました。
定期金賠償とは、一定期間又は不確定期間ごとに、一定額の支払意を受けるという方法です。たとえば、被害者が●歳になるまで毎年、賠償金を受領するといったような場合や、交通事故が原因で働くことができないほどの後遺障害が残ってしまった場合に、日々の生活費などの引き当てとして、損害賠償を月払い(分割払い)で受け取るという方法をとることが、例として挙げられます
定期金賠償のメリット
定期金賠償には、一時金賠償にはない被害者側のメリットが存在します。
(1)中間利息控除がない(受け取れる金額が有利に計算される)
一時金賠償の場合、将来の損害の分の賠償金を前倒しして一括で受け取ります。しかし、将来もらえるはずのお金は、現在手元にあるお金よりも価値が低いと考えられています。なぜなら、いま手元にお金があれば、運用して手元のお金よりも増やせる可能性があると考えられるからです。例えば、銀行にお金を預けた場合、利息が付くため、受け取った金額よりも多い額を将来的に取得できるということが挙げられます。
つまり、加害者が算定した逸失利益を一時金として全額支払ってしまうと、被害者は実際の損害を上回る賠償金を手にすることとなってしまい、公平さに欠けることになります。そのため一時金賠償の場合、「中間利息控除」により、将来にわたってもらえるはずだった金額から一定程度減額した分しか被害者は受け取れないという方法がとられています。しかし、定期金賠償ではこれを回避することができます。
(2)将来の変化等への対応
後遺障害が裁判後に重篤化した場合や、インフレで平均賃金や物価が大幅に上昇した場合などに、定期金賠償の増額を求める訴えを提起することができます。また、それが認められれば、実態に沿った適切な支払いを受けられます。一時金賠償では、請求時に将来に発生する損害を擬制して受領するため、被害者の介護状態が変化した場合や物価変動などに対応ができません。これに対し、定期金賠償では、これを回避し、損害をより公平に分担することができます。
(3)消費リスクの回避
一時金賠償によりまとまった金額を一度に受け取ると、早い段階でお金を使いきってしまう可能性があります。この点、定期金賠償の場合だと、給料や年金のように、毎月支払われる仕組みのため、早いペースで賠償金を消費してしまうリスクが避けられます。
定期金賠償のデメリット
定期金賠償には、被害者側に有利な点がある反面、一時金賠償にはないデメリットも存在します。定期金賠償を求める際には、次のデメリットを受け入れられるかをよく考えてください。
(1)支払い義務者の資力悪化リスク
定期金賠償の場合、今後長期間にわたって加害者側から定期的に賠償金を支払ってもらう必要があります。後遺障害逸失利益の定期金賠償は、多くの場合、事故当時から就労期間中ずっと継続します。その間、もし経済混乱や大災害などで任意保険会社の経営が立ち行かなくなれば、定期金賠償の支払いも滞ることが予想されます。このように、定期金賠償には支払い義務者の資力悪化の影響を受けるという大きなデメリットがあります。
(2)インフレなど事情変更への対応の必要
現状の判決による定期金賠償では、期間ごとの定額の支払いしか想定されていません。しかし、20年後や30年後の物価、賃金、介護費用の相場が変わらないとはかぎりません。定期金賠償の場合、将来、物価水準が大きく変化して判決の定期金が不相当となった場合には、判決の変更を求める訴えを提起することができますが、逆に言えば、変更の訴えを提起する必要があります。これにより、被害者側には訴えの提起に伴う時間的・金銭的負担等が強いられます。
(3)事故と紛争を忘れることが困難
一時金賠償の場合は、賠償金を一回支払ってもらえば終わりですが、定期金賠償の場合は、今後長期間にわたって加害者(の加入していた任意保険会社)からの賠償金支払いを受けることになります。任意保険会社は、定期的に被害者の現状を確認し、定期金を支払います。このように、被害者は加害者側や保険会社と長期的かつ定期的ににやり取りをすることとなります。そのため、被害者は、いつまでも事故と紛争を忘れることができず、辛い気持ちが長期間残存するという可能性があります。
まとめ
以上のように、賠償金の請求を、一時金賠償方式と定期金賠償方式のどちらを選択するかについては、慎重な検討が必要となるため、個人で対応することは困難を伴います。加害者側との示談交渉や訴訟を有利に進め、被害者にとって望ましい形で賠償を受けるために、まずは当事務所までご相談ください。