交通事故の過失相殺とは?

1.はじめに

 「過失割合70:30」や「過失割合80:20」など耳にしたことはありませんか?
 一般的な交通事故のほとんどで被害者にも過失割合が付きます。この過失割合をもとに過失相殺を行った上で損害賠償額が決定されるため、過失相殺については交通事故の当事者間で揉めるケースが多いです。
今回の記事では、交通事故の損害賠償に関する過失相殺の定義や決め方、計算方法等について解説いたします。

2.過失相殺とは

 過失相殺(民法第722条第2項)とは、賠償義務者が負担する損害賠償の金額を決定する際に、被害者の過失を考慮するべきというものです。
 交通事故における過失相殺とは、交通事故の過失が被害者側にも認められる場合に、その過失割合を考慮して、被害者が受け取る損害賠償額が減額されることをいいます。
 交通事故は加害者側が100%悪い場合ばかりではなく、被害者側にも一定の過失が認められることがあります。被害者側にも過失がある場合、損害賠償金の全額を加害者が支払うのは公平ではありません。そこで、被害者が受け取る損害賠償金を、被害者の過失分だけ減額するというのが過失相殺なのです。

3.過失相殺と過失割合の違い

 交通事故における「過失割合」と「過失相殺」について、これらは同じ意味で扱われることも多いですが、実際には異なる意味を持っています。
 過失割合とは、事故における被害者と加害者の責任の大きさを数値で表したもののことです。 交通事故は双方の過失によって起こることが多くあります。被害者・加害者それぞれにどれくらい過失があるのかは、「過失割合」という数値で表されます。例えば、「加害者の過失割合」:「被害者の過失割合」=7030のように表現されます。
 過失相殺とは、過失割合に従って、それぞれの損害額を双方に負担させることをいいます。つまり、過失割合は、過失相殺される前提として、求められる双方の過失の責任の大きさであって、「加害者の過失割合」:「被害者の過失割合」=1000であるならば、過失相殺は生じないことになります。

4.過失割合は誰がどう決める?

 交通事故の過失割合は、示談交渉の中で決まるのが通常です。
 示談交渉の際には、被害者の方でも相手方、または相手方保険会社と示談交渉することができますが、多くの被害者、加害者の方は自身の加入している任意保険に任せていると思います。
 そのため、実際には、保険会社から過失割合が「○対○になりますよ」と打診されることがほとんどですが、保険会社が適当に過失割合を決めているわけではありません。過失割合は、事故の内容から類型的に基本過失割合というものを決め、そこに修正要素を加えることにより決められています。
 しかし、保険会社は保険会社独自の基準により算定するため、過失割合を納得できない場合もあるでしょう。被害者自身で交渉する場合には、言いくるめられないように保険会社側の主張が適正な主張であるか慎重に見極めて交渉する必要があります。一旦、合意してしまうと過失割合を変更できない可能性もありますので、十分に注意が必要です。
 このとき、弁護士が代理人として交渉に入れば、実況見分調書等事故現場の証拠に基づいて、より事案に即した過失割合を算定して、保険会社と交渉することができますので、当初保険会社より提案された過失割合から、より有利な過失割合に変更することもありえます。

5.子供が被害者の場合の過失

 問題となるのは被害者が「子供」の場合です。
 13歳未満の子どものケースでは、大人の場合よりも過失割合は5%~20%程度低く修正される場合があり、子どもの過失割合は、年齢によって判断能力の有無が分かれます。  しかし、一定の過失割合の修正が必ずしもかかるわけではなく、事故状況によって過失割合は細かく判断されるため、詳しくは弁護士に相談されることをおすすめします。

6.過失相殺の計算方法

 損害賠償金に過失相殺を適用する計算式は以下のとおりです。
 被害者側が得られる損害賠償金=損害賠償金総額×(100%-被害者側の過失割合)
 過失相殺は、損害賠償総額から請求者の過失相殺率を引いて算出します。以下で計算例について詳しく解説していきます。

【計算例】過失割合90:10のケース
 加害者の損害額50万円、被害者の損害額200万円だとします。
 加害者の過失割合が90%ですので、上の計算式に当てはめると、
 損害賠償金総額200万円×(100%-10%)=180万円
 よって、加害者は180万円の支払い義務を負います。
 一方で、被害者にも10%の過失割合があることからすれば、加害者の被害額50万円のうち、5万円の支払い義務を負います。
 但し、加害者側の損害部分について、加入されている保険を使用すれば、対人・対物保険により支払われることとなります。
 そのため、結果としては、加害者が被害者に対して、180万円の支払い義務を負うことになります。

7.おわりに

 交通事故の賠償額を決めるにあたって過失割合は、重要な交渉事項の一つです。相手方保険会社から提示された金額に納得ができない場合もあるのではないでしょうか。
 相手方保険会社は、基本的に保険会社の負担が少なくなるよう、過失割合を検討して提示してくるため、場合によっては事案の性質を考慮しない提示内容になっている可能性があります。必ずしも提示された金額が正しいとは限りません。交渉をせず言いなりになってしまうと、受け取れる賠償金が少なくなってしまう可能性があります。
 交渉には、自分の主張する過失割合が正しいという証拠や事故の知識が必要です。病院への通院や、通常の仕事をしながら、損害賠償請求のための証拠を集め、過失割合等の主張を構成していくことは難しいと思います。
 過失割合をはじめお困りのことがありましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。

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