相続放棄の申請手続について

1 はじめに

 相続放棄(そうぞくほうき)とは、相続の際に被相続人(亡くなった方)の財産全てについて、権利や義務を一切引き継がずに放棄することです。
 たとえば、親の遺産に借金などの負債が含まれていた場合、相続放棄をすることで借金を引き継がなくてよくなります。相続放棄をした場合、プラスの財産とマイナスの財産、いずれも相続人が相続することはありません。ほとんどの人は相続放棄の手続きを行うにあたり、不安を抱えている方も多いでしょう。実際に自分で相続放棄の申請を行う場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

このコラムでは、相続放棄の手続きとはどんなものなのか、その方法や必要書類について解説していきます。

2 相続放棄について

⑴ 総説
 相続放棄は、裁判所に必要な書類を提出することで認められます。
相続放棄の手続きは自分で行うこともできますが、この手続きには相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内という期限があります(民法第915条第1項 熟慮期間)。
また、相続に関する知識がない場合に、書類の不備や提出漏れなどが発生して結果的に相続放棄の申述が認められない恐れもあります。弁護士であれば、相続放棄に関する手続きを一任できるので、確実に手続きを済ませたい人は弁護士に依頼することをおすすめします。

⑵ 相続放棄手続の具体的な流れ
 では、相続放棄の手続きの流れについてご説明していきます。
 相続放棄を希望する相続人は、裁判所に相続放棄申述書とともに必要書類を提出します。相続人の立場によって必要書類が異なるので注意が必要です。

全ての相続人に共通する必要書類は、次の6点です。
①相続放棄申述書
➁被相続人の住民票除票または戸籍の附票
③相続放棄する相続人本人の戸籍謄本
④被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
⑤収入印紙800
⑥切手(裁判所によって必要な額と枚数が異なるので管轄の裁判所に確認)

①相続放棄申述書は、記入すべき事項としては形式的なものが多いのですが、「申述の理由」の欄が相続放棄の審査において重要視されます。また、必要に応じて詳細な事情説明書や資料説明書などを添付する場合もあります。

➁被相続人の住民票除票または戸籍の附票ですが、住民票除票は被相続人が亡くなった時に住民登録をしていた役所で、戸籍附票は被相続人の本籍地の役所で取得できます。こちらは郵送でも取得できるので、もし遠方の場合は管轄の役所に問い合わせましょう。

③の相続放棄する方の戸籍謄本は、戸籍を置いている本籍地の役所でしか取得できず、本籍地と居住地が異なる場合、居住地の役所では取得できませんので、注意が必要です。

 相続放棄の申述先は、家庭裁判所です。
 ただし、全国どこの家庭裁判所でも良いのではなく、相続放棄の申述先の家庭裁判所は「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所と決まっています。もし誤った管轄に申述の申立をしてしまった場合には、正しい管轄に送られるのではなく、誤って提出した申述申立を取り下げた後、正しい管轄で再度の申立てをする必要があります。
また、相続放棄をするにあたって最も注意しなければならないのは、相続放棄には期間の制限があるということです。
相続放棄は、相続開始を知った時から3カ月以内にしなければなりません(民法第915条第1項本文 熟慮期間)。

 このように、相続放棄の申述期限(手続きの期限)は短いため、相続開始直後から準備しても間に合わない場合があります。
また、期限経過後の相続放棄は原則として認められないため、迅速に書類等を用意し申述手続を行う必要があります。そして、相続放棄の効力は絶対的であり、一度決まった相続放棄の撤回もできないことから、短期間で、慎重かつ確実に被相続人の財産調査を終えなければなりません。

3 まとめ

 このように、相続放棄の手続きにあたっては、3ヶ月の熟慮期間の制限の中で、様々な書類を準備しなくてはなりません。
 被相続人が死亡した場合、葬式の手配や診断書の提出など、やらなければならないことが沢山出てきます。そのような状況下で、被相続人の財産を迅速かつ確実に把握し、相続放棄をすべきかを検討した上で、必要書類を集め相続放棄の手続きを行うのは非常に大変です。期間内に手続きを終えられるか不安な方、慣れない相続手続きに不安を感じる方は、相続問題の経験のある、当事務所の弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 増井総合法律事務所であれば、役所に提出する書類の収集から裁判所への提出手続きまで、一括して依頼することが可能です。
 お困りの際には、増井総合法律事務所までご相談ください。

 

PAGE TOP