遺産分割の方法について

はじめに

 相続人が複数いる場合、被相続人が死亡したことにより、その財産は相続人の共有の財産となります(民法898条)。このように、被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続のことを「遺産分割」といいます。

今回の記事では、遺産分割の方法について解説いたします。 

遺産分割の4つの方法について

 まず、一般論として遺産分割には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」という4つの方法があります。

 これらの分割方法のうち、いずれを選択するかは、家庭裁判所の広い裁量に委ねられています。すなわち、家庭裁判所が、民法第906条に則り、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各共同相続人の職業その他一切の事情を考慮して、当事者の意思に拘束されることなく、後見的立場から合目的的に裁量権を行使して具体的に形成決定することになります。

 ただし、実務においては、分割方法につき、いずれを選択するかを決める際には、各当事者の意向を聴取し、可能な限りこれを尊重する運用をしています(『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』片岡武・管野眞一 403頁)。

 それぞれの分割方法の検討順序としては、まずは「現物分割」を検討し、それが相当でない場合には「代償分割」を検討し、「代償分割」もできない場合には、「換価分割」を検討し、共有のままにする「共有分割」は最後の手段となります。

① 現物分割 
 現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割するものです。
 例えば4人の子供賀親の遺産である1つの土地を相続して分割する場合に、土地を分筆して、長男がこの部分(土地)、二男がその隣の部分(土地)、長女がさらにその隣の部分(土地)、次女がその隣の部分(土地)、というように、土地を実際に分けたうえで、それぞれを単独で所有するという分割方法です。

② 代償分割
 代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させた上、他の相続人に対する債務を負担させる方法です。例えば、上記の場合で、例えば長男だけがこの土地を必要として、他の3人は土地を使おうとは思っていないような場合、土地の評価額を算定したうえで、全部長男が単独で相続する代わりに、本来、他の3人が相続できるはずだった土地の4分の3の評価額を長男が、次男、長女、次女に4分の1ずつ支払う、という方法です。 

③ 換価分割
 換価分割とは、遺産等を売却等で換金(換価処分)した後に、代金を分配する方法です。すなわち、現物を分け合うこともできず、代償分割もできないような場合に、土地を売却してお金に換えて分ける方法です。換価分割(任意売却)のメリットとしては、高額での売却が期待でき、手続きの進行も早いことが挙げられます。

④ 共有分割
 共有分割とは、遺産の一部または全部を具体的相続分による物権法上の共有取得とする方法であり、共有関係を解消する手段は、共有物分割訴訟(民法第258条)によることになります。すなわち、どうやって分ける話がまとまらないので、とにかくその土地を法定相続分等で、共有しあうということです。先ほどの例ですと4分の1ずつ兄弟が一つの土地を持ち合うということになります。

 まずは、誰がどの財産をどれだけ相続するか、相続人全員で話し合って決めることを「遺産分割協議」といいます。相続人の一人でも欠けてしまうとその「遺産分割協議」は無効になりますので注意が必要です。

 また、当事者同士での協議を行ない、これがまとまらない場合は、裁判所で遺産分割調停を行ない、調停委員を交え話し合いをすることになります。調停の場でも話し合いがまとまらない場合は、裁判所の審判により、最終的な結論が下されます。

おわりに

 遺産分割の際には、さまざまなトラブルがつきものです。ときには相続人の間で意見が合わずにもめ事となり、解決まで何年もかかってしまうケースもあります。また、相続人が正しい遺産分割方法を知らず、自分の相続分を大きく減らされるなどの不利益を受ける恐れもあります。トラブルや不利益を避けて、スピーディにかつ安全に遺産分割の手続きを進めるには、弁護士によるサポートが役に立ちます。
 お困りの際には、どうぞお早めに増井総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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