個人再生手続きとは

はじめに

 個人再生手続きとは、債務整理手続きの1つです。具体的には、個人再生とは、支払い不能に陥るおそれのある債務者が、法律の定める要件を満たす金額を3年間から5年間で返済する再生計画を立て、再生計画が裁判所によって認可されると、債務が減免される制度をいいます。

 すなわち、個人再生手続きは、①借金の返済が困難になった個人が、債権者に対する返済総額を少なくし、②少なくなった後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を裁判所に提出し、③計画どおりの返済ができれば、残りの借金(債務)が免除され、計画的に再生できるという手続きです。

個人再生手続きを申し立てるには、条件があります(民事再生法221条第1項)。
・住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円以下の個人である
・毎月安定した収入があること
・将来継続的に収入を得る見込みがあること

逆に、個人再生できないケースは以下の通りです。
・住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円よりも多額にわたる場合
・毎月安定した収入がない場合
・申立ての費用や弁護士に依頼する費用を用意できない場合

個人再生手続きのメリット・デメリット

個人再生手続きを行うメリットとデメリットについてもご説明いたします。

メリットは以下の通りです。
・住宅ローンを除いた借金を大幅に減額できる
・借金の原因については問われない
・任意整理に比べて減額の幅が大きい

次にデメリットです。
・自己破産とは違い、全額免除ではない
・信用情報期間に情報が登録される
・官報に住所氏名が掲載される

小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続

 個人再生手続きは2種類あります。①小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の2つです。

①小規模個人再生手続
小規模個人再生手続とは、自営業者向けの手続きです。主に個人商店主や小規模の事業を営んでいる人などを対象としています。利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
・借入総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
・将来継続的に収入を得る見込みがあること
 そして、この手続きでは、債務者が破産した場合に得られる配当額を上回り(清算価値保障原則)、かつ、最低弁済額要件(民事再生法23123号・4号)を満たす内容の分割弁済をしていくことになります。
最低弁済額要件は、以下のとおりです。

借入総額(住宅ローンを除く)

最低弁済額

1円~100万円未満

全額

100万円~500万円未満

100万円

500万円~1500万円未満

借入総額の5分の1

1500万円~3000万円未満

300万円

3000万円~5000万円以下

借入総額の10分の1

②給与所得者等再生手続
 主に会社員などの給与所得者向けの手続きです。
この手続きを利用するためには、小規模個人再生と同じく条件があります。
・借入総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
・給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある個人で、その変動の幅が小さいと認められる個人であること
が必要です(民事再生法第221条第1項・239条第1項)。なお、実務上、年間の収入の変動の幅が5分の1以内であれば、変動の幅は小さいと考えられています。

 この手続きでは、清算価値保障原則と小規模個人再生の最低弁済額要件をクリアすることに加えて、再生債務者の収入や家族構成などを元に可処分所得(収入から、所得税と生活費を差し引いた後の、自由に使うことができる所得のこと)を割り出し、その2年分以上の額を弁済原資に充てることが必要となります。

 実務上では、会社員の方が再生手続きをする場合でも、多くのケースで給与所得者等再生手続ではなく小規模個人再生手続が選択されています。その理由は、この手続ができた当初、給与所得者等再生手続は、小規模個人再生手続と違って再生計画案に債権者の同意が不要とされている点がメリットになるだろうと考えられていたからです。しかし、実際に運用を始めてみると、小規模個人再生の案件でも、債権者の不同意が出る場面はあまりないということが分かってきたことから、そうであれば、可処分所得の2年分以上の額を弁済原資に充てなければならない給与所得者等再生手続よりも小規模個人再生の方が再生債務者にとって有利だろうと判断されることが多くなってきたからです。
 
 また、住宅を維持する場合は、再生計画に基づく弁済期間中、住宅ローンの弁済については再生計画に基づく弁済とは別に行っていく必要があると考えられています。そのため、給与所得者等再生手続を選択した場合、可処分所得を弁済原資に充てる結果、最低限度の生活をしていくことになるにもかかわらず、そこから更に住宅ローンの支払いに充てるお金を工面しなければならないということになるのです。もちろん、再生計画に基づく弁済期間中については、住宅ローンの元本の一部を猶予してもらう形で弁済月額を減少させることができますが、それでも生活が相当厳しいものになるだろうことは間違いありません。サラリーマンの方でも、いきなり給与所得者等再生手続を選択するのではなく、小規模個人再生手続を選択できるケースかどうか、弁護士に一度確認してもらった方が良いでしょう。

さいごに

 個人再生は、法的な手段で借金の整理をする債務整理手続きの1つです。これには裁判所への申立てが必要となりますが、書類に不備があっては手続きが上手く行われないこともあります。個人再生手続きを検討している方、借金の整理についてお悩みの方は、当事務所にぜひ一度ご相談ください。

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