交通事故紛争処理センターについて

はじめに

 「交通事故紛争処理センター」とは、交通事故の被害者が、加害者(加害者側の保険会社)との示談交渉が進展せず、交通事故の示談をめぐる損害賠償などの問題で困っている時に、すぐ裁判を起こすのではなく、中立な立場から公正かつ迅速な救済を図り、当事者の利益を保護することを目的として設置された公益財団法人で、「ADR(裁判外紛争解決機関)」と呼ばれる機関の一つです。
 今回の記事では、「交通事故紛争処理センター」について詳しく解説いたします。 

 まず、交通事故による問題を当事者同士の話し合いや交渉で解決できない場合、一般的には訴訟を経て裁判所に判断を委ねることになります。しかし、全てのケースが当事者同士で解決できるわけでなく、だからと言ってその全てで裁判を起こすことも現実的ではありません。そういった場合の救済策として交通事故紛争処理センターは存在しています。現在、全国11ヶ所に本部・支部・相談室が設けられています。

交通事故紛争処理センターの業務

 交通事故紛争処理センターが行う業務は、以下の通りで、いずれも無料です。

交通事故の示談に関する法律相談
 交通事故紛争処理センターには全国各地に交通事故損害賠償問題に詳しい委嘱弁護士がいるので、示談交渉や、賠償などの法律的な知識がなくても、所在地ごとに選任された相談担当弁護士が中立で公正な立場から対応してくれます。具体的には、当事者の主張の聞き取りや該当資料の確認や問題となる事柄等の整理、状況に合わせたアドバイスなどを行います。
 ただし、交通事故紛争処理センターは、示談を見据えた解決を前提として運営されているため、示談交渉が始まっていない段階(事故直後や治療中)では相談をすることができないため、注意が必要です。 

和解(示談の合意)あっ旋
 相談担当弁護士が相手方との間に入り、和解(示談の合意)のあっ旋をしてくれます。交通事故問題における和解とは、当事者同士が話し合いによりお互いに譲り合うことで妥当な賠償額を決め、解決を図ることを意味します。当事者の双方が合意しなければ和解には至らないため、何度も話し合っても和解できないケースも存在します。相談担当弁護士によるあっ旋を経ても和解できなかった場合は、次に説明する審査手続きに移行することになります。 

審査手続
 和解あっ旋を行っても、和解が難しい場合もあります。その場合、相談担当弁護士から「あっせん不調」の通知がされますので、事故の当事者は審査の申立を行うことができます(あっ旋不当の通知を受けた日から、14日以内に限る)。

 申立が行われると、交通事故紛争処理センターの審査会は、被害者および加害者双方に説明を求め、双方の意見を聴きます。審査員は双方の事情を聞き、過去の類似判例などを参考に審査し、公正中立な立場に立って最も妥当と考えられる裁定を行います。審査会は、法律を専門とする学者、裁判官経験者、経験豊富な弁護士などから選任される3名の審査員で構成され、審査・裁定を行います。

 そして審査会による最終解決案、いわゆる「裁定」が提示されます。 申立人は、裁定が告知されてから14日以内に同意する旨の意思表示をしなければ、自動的に最低に不同意であるとみなされ、その後は裁判等に移行せざるを得ません。

利用手続きの終了
 以下の場合、センターとの関係は終了となります。

・和解が成立した時
・和解担当者が和解の成立見込みがないと判断し、和解あっ旋が不調となった時
・和解が不適だと判断された時(事故とケガの因果関係が不明な場合や、高度な医学的判断が必要な場合など、訴訟で解決を図るのが適当だとセンターが判断した場合)
・審査が不適であると決定された時
・和解あっ旋または審査の申立が取下げられた時
・審査会の裁定に対し、申立人が不同意の回答をした時
・審査会の裁定に基づいた示談が成立した時
・当事者がセンターの利用規定に従わず、担当弁護士や審査会が終了が適当であると認めた時

交通事故紛争処理センターに依頼するメリットとデメリット

 交通事故紛争処理センターに依頼するメリットとデメリットがあります。

メリット
① 費用をかけずに法律相談や和解あっ旋に対応してもらえる
② 保険会社との示談交渉を任せられるので進展が期待できる
③ 公平かつ公正な機関で、処理が迅速かつ信頼性が高い
④ あっ旋を行うのが弁護士であるため、過去の判例に基づいた、比較的高額の「弁護士基準」による金額での解決が見込める 

デメリット
① 被害者自身で出向き面談する必要があり、また、申請に必要な書類(診断書、診療報酬明細書など)を被害者が用意するため手間がかかる
② 相談担当弁護士との相性が悪いと感じても、自分で選ぶことはできない
③ 和解成立の見込みがない場合はあっ旋終了になる
④ 依頼できるケースが限られている 

交通事故紛争処理センターに依頼できないケース

 交通事故紛争処理センターは、便利な機関である一方、交通事故の種類や状況によっては利用できないケースがあるので注意が必要です。

依頼を受け付けられないケース:
・自転車と歩行者による交通事故
・自転車同士の交通事故
・被害者自身が契約している保険会社との紛争
・後遺障害の等級認定に関する紛争
・当該交通事故で既に調停または訴訟が行われている場合
・センター以外の紛争解決機関による手続きが既に進行している場合
・被害者が治療中、後遺障害認定手続き中、または異議申し立て中の場合など、示談交渉段階前の場合 

加害者が同意した場合にのみ受け付けてもらえるケース:
加害者が任意保険を契約していなかった時
・加害者が契約している任意保険の約款等に直接請求権の規定がない時
・加害者が契約している保険会社が、日本損害保険協会、あるいは外国損害保険協会に加入していない時
・加害者が契約している保険会社が不明の場合
・加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)、全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)、交協連(全国トラック交通共済協同組合連合会)、全自共(全国自動車共済協同組合連合会)および日火連(全日本火災共済協同組合連合会)以外の時

まとめ

 交通事故紛争処理センターはあくまでも中立の立場で紛争の解決に尽力してくれます。
 しかし、和解あっ旋を担当する弁護士は、当事者の間をとりなす存在であり、依頼者(被害者)の立場になって、依頼者個人の利益のために動いてくれるわけではありません。そこで、その点を充分に理解して、利用を検討する必要があります。交通事故の被害者にとって損害賠償金は、ケガで働けなかった分の損害の補填や、後遺症等で働けなくなった分の損害の補填として重要なものです。そのため、加害者側の保険会社から提示された少ない損害賠償金額をそのまま受け入れ、妥協してしまうと、その後の生活が困難になってしまうかもしれません。
 当事務所には、交通事故問題を得意としている弁護士がおります。依頼者(被害者)やご家族の不安や心配の解消に努め、最終的には適切な賠償金が得られるよう、全力で業務に取り組むことをお約束します。少しでもご不安があれば、当事務所にご相談ください。

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