「刑事記録」を取得するには?
交通事故で賠償責任の有無や過失割合が争いとなるときなどには、刑事記録が有力な証拠となります。今回の記事では、刑事記録とは何か、また、刑事記録の取得方法やその範囲について解説いたします。
刑事記録とは何か
刑事記録(刑事事件記録)とは、刑事手続の過程において、捜査機関や裁判所等によって作成・収集された書類です。例として、実況見分調書、供述調書、写真撮影報告書、捜査報告書、起訴状、裁判書(判決書・決定書・命令書)等があります。
この刑事記録を入手することにより、事故現場の状況、事故の原因、当事者の供述、関係機関の意見・認定などの情報を得ることができ、民事事件(損害賠償請求)においても有力な証拠資料となります。
交通事故で過失割合などについて争いが生じた際、特に重要なのは、実況見分調書(写真撮影報告書も含む)と供述調書です。実況見分調書は、事故現場の状況や事故態様を客観的に証明できる証拠です。供述調書は、当事者や目撃者の供述内容が記録された証拠です。
刑事手続きの流れ
交通事故が発生したときの刑事手続の流れは、以下の通りです。
- 警察で捜査
- 警察から検察へ送致
- 検察で起訴・不起訴の決定
- 起訴の場合は、刑事裁判手続
- 裁判終了後、検察庁で刑事記録を保管
記録の特定と事前調査
刑事記録を取り寄せるためには、事件を特定する「検番(送致番号)」、送致年月日、担当の検察庁を把握する必要があります。これらの情報は、以下の手順で調査します。
- 交通事故証明書を確認し、事件が「人身事故」として扱われているか確認する。
- 管轄警察署に対し、電話または弁護士会照会を用いて、検察庁への送致状況(送致番号・送致日)を照会する。
- 送致先の検察庁(事件係)に対し、事件の処分内容(起訴・不起訴・係属中)を照会する。
刑事記録の取得方法
上記、刑事手続の進行段階に応じて、取得できる記録や入手方法が異なりますが、刑事記録を入手する方法は主に3つです。なお、起訴・不起訴が決まる前(捜査段階)には、刑事記録の謄写(コピー)は入手できません。
1. 検察庁等への閲覧謄写申請
被害者の代理人等として、記録を保管する検察庁や裁判所に対して直接申請を行います。
2. 弁護士会照会(23条照会)
弁護士法23条の2に基づき、弁護士会を通じて検察庁や警察署に記録の開示を求める方法です。
3. 文書送付嘱託
民事訴訟提起後に、裁判所を通じて文書の所持者(検察庁や裁判所)から記録を取り寄せる手続です。
弁護士法23条の2
第1項 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
第2項 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
加害者が不起訴となった場合は、原則として、弁護士会照会をすれば実況見分調書は取得可能ですが、供述調書の開示の運用は中々厳しいです。
刑事確定記録の閲覧謄写
刑事裁判の終結後は、原則として、誰でも刑事確定記録(刑事確定訴訟記録)を閲覧できます(刑事訴訟法53条1項)。
しかし、実務上はプライバシー保護などの理由により、事件に関係のない第三者に対しては限定的な形でしか閲覧を認めないことが多いです。
また、同項は、謄写の権利まで保障するものではありませんが、実際には記録事務規程等の運用に基づき、閲覧が許可される場合にはあわせて謄写も許可されることが多いとされています。
刑事訴訟法53条1項
何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。
保管期間に注意
刑事確定記録は、第1審の裁判をした裁判所に対応する検察庁で、所定の期間保管されます(刑事確定訴訟記録法2条)。 交通事故の場合、原則として、以下の通りです。
確定記録(起訴された場合の記録)の場合、刑の重さに応じ3年(罰金等)~10年
(※危険運転など罪名によっては、10年~30年になることもあります。)
不起訴記録の場合、原則5年(これも刑の重さによって取り扱いが異なります。)
保管期間を過ぎると入手できなくなるので、保管期限内に保管している検察庁へ、閲覧・謄写を請求する必要があります。
まとめ
刑事記録は、被害者が自分で入手することも可能ですが、刑事記録が必要となるほど加害者側と揉めているのであれば、示談交渉を弁護士に任せることをおすすめします。
弁護士は、各法律の規定に基づき、刑事記録の開示を請求でき、また、運用により閲覧・謄写が認められている場合(不起訴記録など)でも、弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)を使って、スムーズに刑事記録を取得できます。刑事記録は、刑事手続のために作成されるものですが、民事事件においても、相手の賠償責任や過失割合を判断する上で、有力な証拠となります。
増井総合法律事務所は、交通事故の案件を数多く取り扱った経験のある弁護士がおりますので、少しでもご不安ご心配がおありの方は、お早めに当事務所までご相談ください。