破産申立てをしたときの調査の範囲について

はじめに

 破産の申立てをする場合、申立人の財産や経済状況についてさまざまな調査がされることになります。この記事では、破産の申立てをした場合の調査の対象や方法について見ていきます。

調査が行われる理由

 破産の制度は、支払不能という状況に至った人に対し、その債務の責任から免れさせるというものです。
 しかし、仮に債務者が免責に至るまでの間に財産を隠したり浪費やギャンブルによって財産を減らしたりしても、そのような事情が考慮されず免責が認められてしまうとすると、お金を貸すなどした債権者は不当に不利益を受けてしまいます。
 そこで、裁判所や破産管財人が、破産申立てをした人の財産や破産に至った経緯について調査することになっています。

誰が調査を行うのか?

 自己破産を申し立てた場合、まず裁判所の書記官によって、提出資料に関する詳細なチェックが行われます。
 また、申立人が一定程度の財産を有するなどの場合には、裁判所が破産管財人を選任します。この破産管財人は、申立人の財産等について調査する権限を持っています。
 そして、申立人と申立代理人になった弁護士は、破産管財人による調査と質問に応じる義務を負います。

調査の対象や範囲は?

破産手続においては、裁判所が申立人(破産をする人)に対して調査を行います。申立人の財産や借金についての調査は、すでに述べた破産管財人が行うのが原則です。調査の対象は、主に以下の3点です。

  1. 財産に関する調査:不動産(土地建物)・自動車・バイク・20万円以上の財産(貴金属、美術品など)・保険(終身保険、個人年金保険など)・有価証券(手形小切手、株式など)
  2. 借金額(債務額)や借入れ先、滞納の有無などに関する調査:申立書類、預金通帳の明細、信用情報など
  3. 免責不許可事由の有無に関する調査:破産管財人からのヒアリング

破産を認めるために、これらの事項についておよそ数か月以上にわたり徹底的に調査します。

⑴ 財産に関する調査
 申立人がどのような財産をどれくらい持っているのかどうかについては、基本的に申立人自身の自己申告となります。ただ、長い生活の中で全ての財産について把握できているとは限らず、申告の際に漏れがある場合、あるいは意図的に財産を隠したりするケースもあります。
 破産手続が全て終わった後、処分が漏れていた財産が判明してしまうと、債権者にとってさらなる不利益をもたらします。そのため、財産の処分漏れがないよう、申立人の財産がどれだけあるかについて、裁判所や破産管財人による調査がなされます。

a. 申立て時に提出した書類の確認
b. 申立人への聞き取り調査
c. 現地調査
d. 転送郵送物の確認

a. 申立て時に提出した書類の確認
 自己破産申し立て時に破産者から裁判所に提出した以下の書類で調査します。
・破産申立書
・財産目録
・家計収支表
・預貯金の通帳と入出金明細
・給与明細
・源泉徴収票のコピー
・不動産に関する書類(登記事項証明書)
20万円以上で購入した物品のレシート等 

 提出書類の中に、申立人の財産状況を費目ごとにまとめた、「財産目録」というものがあります。財産目録には、手持ち現金や預金などの財産を漏れなく記載します。この財産目録は、基本的には申立人の自己申告に基づき作成され、裁判所に提出された段階で書類漏れや不自然な点がないかどうかが精査されます。

b. 申立人への聞き取り調査
 特に、申立人に一定額以上の財産があるなどで破産管財人が選任される管財事件では、破産管財人が申立人に対し、破産に至るまでの経緯などについて聞き取り調査を行ったり、債権者や利害関係者へ聴取したりすることもあります。

c. 現地調査
 さらに、裁判所によっては、破産管財人が破産者の自宅を訪れ、財産の状況について調査を行う場合もあります。

d. 転送郵送物の確認
 破産管財人がついた場合、破産手続開始決定が出ると、申立人宛に届いた郵便物について、申立人ではなく破産管財人に届けられることになります。そして、破産管財人は、申立人宛に届いた手紙を開封し、中を確認することができます。このように郵便物を確認することで、例えば証券会社等から破産者宛ての郵便物が届き、申告されていない株式等の財産が発覚することがあります。

⑵ 債務額や借入れ先、滞納の有無などに関する調査
 金額や借入れ先、滞納の有無などについても綿密な調査がなされます。自己破産を申し立てる際の提出書類の一つに、借入れ先と金額などをまとめた「債権者一覧表」という書類があります。この債権者一覧表には、消費者金融や銀行からの借入れだけでなく、家族や友人などの個人間の借入れも含め、全ての債務を漏れなく記載しなければなりません。具体的には、債権者名、債権者の種類および債権額などの事項を記載します。
 破産を検討している方の中には、複数の金融会社や人から借入れをしているために、どの会社・誰からいくら借りたのかがわからなくなっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、債務者が破産手続を行ったことを知らないまま破産手続が終結し、手続に参加できなかった債権者の債権には、免責されません。そのため、せっかく破産をしたとしても、結局借金を返さなければならなくなる可能性があります。免責を受けられる全ての債務について免責を受けるためには、ご自身の債務を全て忘れずに記載しなくてはなりません。 

【借金の内容や債権者に関する調査の手法】
■ 破産者から提出された「債権者一覧表」にある債権者へ「破産債権届出書」を送付
■ 債権者から返送された「破産債権届出書」または「交付要求書」をもとに、債権の内容や金額を確認
■ 信用情報機関に破産者の信用情報を開示請求
■ 通帳の入出金明細の確認

 まずは、債権者や債権額といった事項について、債権者一覧表の申告内容が正しいか、破産者と債権者の両者の申告額が一致しているかどうかを確認することになります。
 また、破産管財人がついた場合、信用情報機関に対し、申立人の信用情報の開示請求を行い、借入状況等について調査することもあります。信用情報の開示請求はご自身でもできますので、破産を検討される場合、事前に信用情報の開示手続を行い、債権者の漏れをなくすようにすると、申立て準備もスムーズに行うことができます。

 さらに、自己破産の申し立てを行う際には、手元にある全ての銀行口座の通帳につき、過去12年分の入出金履歴を記帳したものを提出する必要があります。例えば、毎月同じ日に個人の口座に送金している記録が見つかった場合、その送金先の人にお金を借りているのではないかと疑問に思われ、破産管財人が送金理由を聞くこともあります。なお、通帳に関しては、個人からの借入れに関する事実のほかにも、多額の出金がある場合の使い道を聞かれたりするなど、さまざまな点で 事実確認を受けることがあるなど、通帳に関しては想像以上に細かくチェックされます。 

⑶ 免責不許可事由の有無に関する調査
 破産者が、破産手続開始決定後、免責許可決定を受けると、その債務について責任を逃れることになります。ここで、免責許可決定を受けられるのは、①後述の「免責不許可事由」がない場合、または、②免責不許可事由があっても、裁判所が、破産手続開始決定に至った経緯等の一切の事情を考慮して免責許可が相当であると認めた場合です。
 つまり、免責不許可事由がある場合、破産者の事情によっては免責が許可されないこともあるのです。免責不許可事由の具体例としては、財産の隠匿、ギャンブルにより著しく財産を減少させたこと又は破産手続において裁判所の調査に対する説明拒否といったことが挙げられます。このような免責不許可事由がないかどうかについても、裁判所や破産管財人が調査を行います。

 ⑷家族の財産や携帯電話の情報はどうか
 破産手続において調査対象となるのは、破産申立てをする本人の財産や債務額等なので、本人以外の家族の財産や、通話履歴やSNS投稿といった金銭以外の情報については、原則として調査対象になりません。
 ただし、例外として、調査の必要性が認められる事情がある場合は、調査が実施されないとは言い切れません。家族の身辺が調査されることも通常ありませんが、破産前に破産者の財産について名義を家族に変更したり贈与したりするのは、免責不許可事由になりうるため、避けるべきでしょう。

まとめ

 自己破産を申し立てた場合に調査される可能性があるかについて解説いたしました。万が一にでも財産や債務について虚偽の申告をしてしまい、すでに見たような破産管財人らによる調査で虚偽であることが発覚してしまった場合、免責を受けられないおそれが生じてしまいます。破産を検討されている方や破産について不安がある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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